2020年も半ばとなり、nVidiaやAMDの次期グラフィックボードが目前に迫っていますが、現行で気になるWQHDのモニターをチェックしておきます。
私が使用しているモニターは下記の通り。
- Acer:34インチ/UWQHD(3440*1440)/Max120hz/湾曲R1900/G-sync対応のPredator X34 (X34Pbmiphzx)
- Asus:27インチ/WQHD(2560*1440)/Max165hz/HDR10/G-sync対応のTUF Gaming VG27AQ(*レビューしてます)
これらのモニターは購入時にPredatorX34が¥150,000-、VG27AQが¥52,000-ほどであり、¥50,000-程度なら安いものだと考える、最も目にするPC周辺機器であるモニターにはそれなりにお金をかけて良いと思っている人間です。
WQHDのモニターは、高リフレッシュレートでもDisplayPort1.4やHDMI2.0の現行入力ポートでも十全に機能するため、次世代グラフィックボード・次世代入力ポートでなくても問題がなく、まさしく円熟期であると捉えています。
なお、今回はTUF Gaming VG27AQは外しています。
一言付け加えるとVG27AQはなかなかオススメです。レビュー記事にも記載しましたが、EMLB-Syncと呼ばれる、黒挿入による残像現象とSyncを同時に実行する機能はかなりの効果です。Adaptiv-Syncがオンになる際しか使用できないようなのが難点ですが。
モニターの購入条件を検討する
条件としては下記を考慮しますが、全てを満たす訳ではありません。特にHDRはDisplay HDR認証なしでも仕方なし。
- WQHD(2440*1440)*wide quad high definition
2560*1440解像度であるWQHDのアスペクト比16:9のモニターを基本に選ぶ。 - リフレッシュレート120Hz以上
これは単純に、自分の目がリフレッシュレート120Hzのモニタに慣れているためで、なおかつ現行のゲーミングモニタは基本的に120Hz以上が基本であるため。 - G-sync、FreeSync、AdaptiveSync対応
必須。これがないとあるとでは快適さが全く違う。PlayStation5などの次世代小ニューマ機でも恐らく使用できるはず。 - Display HDR認証対応
できればHD600以上のものが望ましい。なおHDR400ではあまりHDR映像画像の良さを味わえないと思われる。理由のひとつは現行のHDR非対応のモニターでも350~400nit程度の輝度を持つものも珍しくないから。ただしHDRコンテンツ側がまだまだ少ないという事は留意しておくべきだと思う。また、今後、特にゲーム分野はHDRに対応すると思われるので先を見越して条件としてあげておく。 - VESA100*100対応
モニターアーム対応のため。使うかどうかは分からないが。 - スタンドのつくりが良い
モニターアームを使うならば関係がないが、机の上に直接置く場合も当然ある。モニタのスタンドが安っぽいと、打鍵しただけでモニタが揺れて大変に不快。 - 湾曲はなし
湾曲パネルが流行ったりもしたが、30インチを超えるUWQHDであるような横に長大なモニターでないと意味がないと考える。 - 基本的なサイズは27インチ~30インチ
解像度とモニターのインチ数は永遠の課題ではあるが、ゲーマーであるなら24インチでも画面把握のために良いと思うが、普段遣いも考えると、WQHDならこのあたりが使い勝手が良いと思う。 - ベゼルは狭額縁のものが好ましい
デュアルモニタ前提で考えるのならば、極力ベゼルは薄いものが良い。単体で使うにしても、見た目のすっきりさ、あるいはスタイリッシュさは、従来の分厚いベゼルのものは比較にならない。
モニターを検討する
GIGABYTE:AORUS FI27Q-P
サイズ | パネル | 解像度 | 応答速度 | コントラスト | リフレッシュレート | |
27インチ | IPS(*ELED) | 2440*1440 | 1ms (MPRT) | 1000:1 | Max 165Hz | |
画面同期 (Sync) | HDR認証 | 最大輝度 | 標準輝度 | 色深度 | 色域 | |
Free-Sync premium, G-sync C | HDR400 | – | 350nit | 8bit+FRC | DCI-P3 95% | |
入力コネクタ | I/0 |
湾曲 | ||||
HDMI2.0*2、DisplayPort1.4(HBR3)*1 | USB3.0*3、スピーカー/マイク入力あり |
– |
その他特徴 |
パネルはInnolux M270KCJ-K7B AAS、RGB Fusion対応、残像抑制機能Aim Stabilizer、2020年7月時点で約¥90,000- |
少し高いかなと思いますが、かなり良くまとまっているなという印象を受けます。個人的に注目したいポイントは下記の3点。
- Aim Stabilizer(残像抑制)
- DisplayPort1.4(HBR3)
Aim Stabilizerは、残像を黒フレーム挿入により抑制しようという、一時期ゲーミングモニターでよく取り上げられるZowieで一躍有名になった(気がする)ものです。GIGABYTEのAim Stabilizerは黒ではなく、海外レビューを見る限りは赤~シアンカラーを挿入していようです。単純に黒ではないのならば輝度の低下も減少できるかもしれません。
留意すべきは、Aim Stabilizerによる残像抑制は画面同期のSync系とは排他利用であり、残像か同期かを選ぶ必要がある点でしょうか。モニターのリフレッシュレート上限まで張り付きできる設定(ゲームの設定も含めて)にしておき、Aim Stabilizerをオンにするのならば問題はないかと思いますが、このあたりはユーザーの好みによるかと思います。また、モニター単独の機能であり、コンシューマ機との接続の際には問題ないと思われます。
PCにおいてはDisplayPort1.4が基本的な接続ポートとなりますが、HBR3 (hi bit rate)対応というのが面白い点ですね。まあ一般的にはあまり興味がないところだと思いますが……。
WQHD・165Hz・HDR・10bit(8bit+FRC)という32.4Gbpsに及ぶ広帯域というのは心が踊りますね。これが4K解像度ならば即買いでした。
補足しておくのならば、Free-Sync premiumによるLFC(*Low Framerate Compensation)による、低フレームレートじの画面同期も場合によっては魅力的かもしれません。通常のFree-Sync(あるいはAdaptiv-Syncも)による同期できるリフレッシューレートの下限は48Hzですが、これ以下でも対応しますというものですね。
まあ、48Hz以下というのはかなりの低フレームなので、突発的な負荷によってこのフレーム数が出るようなPCスペックであるのなら、モニターよりも先にPCのスペックを見直すことをおすすめします。
最終的な事前評価は価格に集約します。というのも約¥90,000-という値段は、少し高い気がします。仕様上は画面同期と残像抑制機能が排他利用である点以外は気になるところはなく、かなり良く仕上がっているように思えます。今後、¥70,000-台になれば買いではないかと思います。
ASUS:TUF Gaming VG27AQL1A
サイズ | パネル | 解像度 | 応答速度 | コントラスト | リフレッシュレート | |
27インチ | IPS | 2560*1440 | 4ms(GtG), 1ms(MPRT) | 1000:1 | DP:max170Hz, HDMI:max144Hz | |
画面同期 (Sync) | HDR認証 | 最大輝度 | 標準輝度 | 色深度 | 色域 | |
Adaptive-Sync, ELMB-Sync | HDR400 | – | 400nit | 10bit | sRGB:130%, DCI-P3:95% | |
入力コネクタ | I/0 |
湾曲 | ||||
HDMI2.0*2、DisplayPort1.2*1 | スピーカ2W*2(RMS) USB3.0*2、Audio Out*1 |
– |
その他特徴 |
ELMB-Syncは黒挿入と垂直同期を両立する機能。G-Sync compatibleは認証待ちと思われる。価格は¥60,000-弱か? |
VG27AQを取り上げないといっても後継機は取り上げたい。
前述したように私はVG27AQを購入してレビューしています。「VG27AQ」と「VG27AQL1A」の違いは基本的なパネル性能の向上です。
- 最大リフレッシュレートが165Hzから、170hzに上昇。(DP接続、OC設定時)
- 色域がsRGB99%から、sRGB:130%・DCI-P3:95%と大幅に向上。
- 表示色が8bitから、10bitに(DisplaySpecificationsでは30bitとなってる)
- HDR10対応までだったものから、DisplayHDR400のVESA認証取得。
表その他にも記載しましたが、G-Sync Compatibleは認証申請中であるようですが、前モデルのVG27AQと同様に、G-Sync CompatibleとFree-Syncに対応するというよりは、Adapive-Syncに対応していると見たほうが正しいのでしょう。要するに低リフレッシュレート時(48Hz以下)では、垂直同期は効かないと思われます。あまりに低すぎるため実用上としては問題と見なさないほうが良いです。
マニュアルではVRR(*Variable Refresh Rate)について言及されているため、Adpative-Syncに対応している以上当然と言えば当然ですが、PlayStation5などの次世代機でも使用できるでしょう。
少し気になるのはDisplayPoartの世代が1.2になっているため、最大リフレッシュレート設定時に10bitの表示色は保てないのではないかという疑問がある点です。リフレッシュレートや表示色が向上すればするほど帯域を専有するのは当然ですが、120Hz以上あたりから8bit+FRCに切り替わるのでは?と思いますがどうでしょうか。
ただまあ、前世代のVG27Aでは視覚的にはさほど問題がなかったため、そういった懸念点もあるというだけの話です。実用上は問題がないと思われます。
さて、この機種最大の特徴としては、VG27AQと同様に「ELMB-Sync」です。詳しい案内はVG27AQのレビュー何に譲りますが、要するに画面垂直同期と黒挿入を同時に利用できる機能です。(今までこの2つは排他利用だった)
ただし、マニュアルからは同時利用できる代わりに、両方の機能が有効でないと使えないという仕様である事はVG27AQと変わりがないように読み取れます。
ELMB SYNC:Adaptive-Sync (DP)/Variable Refresh Rate をオンにすると、機能がオンにできます。この機能は、ゲーム中のスクリーンのティアリング、残影、ブレを軽減します。
ASUS TUF ゲーミングモニター VG1Aシリーズユーザーズマニュアル (3-2)
恐らく前モデルのVG27AQで問い合わせがそれなりにあったであろう、ELMB-Syncの適用に関するものの文章は、日本語訳が大分マシになっています。また、引用はしませんでしたが、マニュアルにはHDMI時でも48~144Hzまでなら適用できると読める一文がありましたので、恐らくHDMIでも問題はないのでしょう。
留意しておきたいのは、前述したように、画面垂直同期と黒挿入が同時に機能する事が前提の仕様であるため、Adaptive-Syncがオン→黒挿入オンというフローであるらしく、Adaptiv-Syncがオンになっていないと、黒挿入機能が使えません。
どういう事かというと、VG27AQがそうであったように、現行のPlayStation・Switchなどでは意味がないという点です。私はVG27AQでがっかりしました……。ELMB-Syncが使えるPCでは最高でしたが。
事前評価としてはVG27AQのレビューと合わせて検討したいところですが、現行コンシューマ機を考慮しないのならば買いだと思います。
VG27AQと違い、パネル性能自体が向上している点、特に色域と表示色が拡大されている事が素晴らしい。VG27AQのレビューではクリエイト目的には適さないと評価しましたが、趣味レベルであるならばイラスト、動画などの作成にも十分耐えると思われます。とはいえVG27AQでもこれといった問題はないため、購入自体はどちらでも良いでしょう。
OMEN:OMEN by HP 27i
サイズ | パネル | 解像度 | 応答速度 | コントラスト | リフレッシュレート | |
27インチ | nanoIPS | 2560*1440 | 1ms (GtG) | 1000:1 | DP:max165Hz, HDMI:max144Hz | |
画面同期 (Sync) | HDR認証 | 最大輝度 | 標準輝度 | 色深度 | 色域 | |
G-Sync Compatible, Free-Sync | – | – | 350nit | 10bit | DCI-P3:98% | |
入力コネクタ | I/0 |
湾曲 | ||||
HDMI2.0*2、DisplayPort*1 | USB3.0*2、Audio Out*1 |
– |
その他特徴 |
価格は2020年7月時点で¥48,000-弱か? |
日本ではあまり聞かないブランドですが、要はHPですね。数年絵にnVideiaが提唱したBFGM(*Big Format Gaming Monitor)という4K・120Hzクラスを規定した大画面ゲーミングモニター枠で、OMEN X Emperium 65という65インチのMVAゲーミングモニターの販売が記憶に新しいところです。これ自体は完全に欧米向けで、日本では一般的な家屋の広さというどうしようもない事情で流行している節は全くありませんが、発表時にはそれなりに興奮した覚えもあります。(一時期、大画面信奉者だったので)
さて実際にこのHP27iですが、仕様を見ると前述したモニターのような特徴的な点はありませんが、まあまあ手堅くまとまっているという印象です。私がここで取り上げたのは、パネルがnanoIPSであるという点です。
海外ブログ等も参考にするとLGの27GL850-Bと同じパネルのようで、出自とパネル素性はそれなりに確かだと思われます。nanoIPSは以前にも言及した事があると思いますが、RGBそれぞれの波長を際立たせる効果があります。要するに赤は赤らしく、青は青らしくという意味ですが、nano粒子によるフィルターを通し雑多な色味を取り除き、純粋なRGBの3色に近づける事が可能です。
効果の程は実物を見ないと実感が難しいと思いますが、他のnanoIPSモニター(主にLG)のカラースペースを確認すると、色域は優れている事が確認できると思います。
HP27iに関しても、DCI-P3で98%に達している事からもそれは確認できるでしょう。HDR対応が為されていない点は残念であるものの、現時点で値段が¥50,000-を切る価格でと考えれば、購入検討に値すると思います。
コストパフォーマンスという点で見れば悪くない。
2020年7月時点でのWQHDモニターをどう見るか
2020年7月時点でのモニター事情は複雑です。
4K解像度やHDR、高リフレッシュレート化の兆し、PlayStation5から垣間見える次世代規格HDMI2.1、ゲーミングという意味では画面垂直同期、これらに圧迫される伝送帯域、2020年9月から10月にかけて発表されるであろうnVidia Ampere-GPUやAMD Radeon Navi2X-GPU。
これらの要素が目の前に見えているため、購入を決断を難しくさせていると思います。
ただし、4K・HDR・高リフレッシュレート環境下でのゲーミングは未だに難しく、プロシーンではフルHD解像度・高リフレッシュレートがメインとなっています。別段たまにゲームするよという事ならそこまでストイックになる必要がないためWQHD環境はそう悪いものではないと考えます。
では挙げたモニターの中でオススメはなにかと問われたら、VG27AQL1Aでしょうか。VG27AQでも良いと思いますけどね。